希望のメッセージ 10月15日

 人間は,自らが必ず死ぬという事実を認識している,唯一の生命体だ。いずれ死ぬ,だからすべてのものが無常である,ということを私たちは知っている。では私たちはなぜ生きているのか。死によってすべてが終わってしまうと確信しているなら,なぜ自分の命の意味を信じたり,希望を心に持ち続けたりすることができるのか。
 私たちの命が,たとえちっぽけなものであれ,偉大で神秘的な存在の秩序を形づくる一部であるという深遠な確信によってのみ,希望の存在は説明できる。この秩序の中では,あらゆるものがかけがえのない位置を占めており,耳目に触れないことを実はきちんと見ているものが存在し,行いはどこかできちんと記録されているという確信が,心の奥に潜んでいるからこそ,人は目先の損得を超え,苦難の人生を,善良に勇敢に振る舞うことができるのだ。死は人の心を試す。人は死の存在を否定するのではなく,これに意識的に挑むことによって,死に打ち勝つことができる。
 
 ――ヴァーツラフ・ハヴェル 朝日新聞1995年12月6日
 
 

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