希望のメッセージ 8月17日
キャリアという言葉の意味を,その語源にさかのぼって考えると,「轍」(わだち)という日本語がもっともぴったり合うように思います。『広辞苑』で轍の意味を引いてみると「車が通って道に残した輪の跡」とあります。
むかし,まだ道路にアスファルトの舗装がなく,土のままであった頃,人や物を運んだ馬車などがくりかえし通ると,地面には轍ができました(キャリアは,「運ぶ」という意味のキャリー(carry)とも関係しています)。轍が連なるところに,どこまでも続く道(もしくは路)ができました。キャリアを考えるということは,人生という道をいかにして自分の足で一歩ずつ歩いていくのかを考えることです。キャリア教育とは「道の教育」なのです。・・・
人生という長い道のり,誰もが必ず途中で,迷ったり,悩んだりします。そのときに,どうすればいいのか。そんな困難をくぐり抜けてきた人が,生きるための知恵として,いろいろなかたちでその経験を若い世代に伝えていく。それが本当のキャリア教育です。そんなキャリア教育こそ,若い世代が希望を自分の力で育んでいくことを,後押しする力になるのです。
――玄田有史『希望のつくり方』