希望のメッセージ 10月18日
『ライフサイクル,その完結』(エリクソン・エリクソン/村瀬・近藤訳,2001)では,「基本的不信対信頼:希望」という項において,まず出生について述べ,両親やその存在を心から喜ぶ祖父母を持つ乳児は幸せだという。ここで,無条件的な他者からの愛情について触れている。そして,「現に生きている人は,皆,基本的信頼を獲得し,それによってある程度まで希望という強さを得ているということになる。基本的信頼は希望の証であり,この世の試練と人生の苦難から我々を守る一貫した支えである。」と続ける。次には,高齢者に目を転じ,「(老人は)ぎこちない身体の動きに毎日さらされ,しかも日々そのぎこちなさが増えていくという事態に向き合い,慢性的な屈辱感や急性的な屈辱感に襲われ,希望はいとも簡単に絶望へと道を譲ってしまう」,「しかし,老人はすぐさま,夜になれば太陽は沈むということを受容し,毎朝太陽が輝きながら昇るのを寿いで見るようになる」,「光ある限り希望がある」,と展開している。
――渡辺弘純「希望の心理学について再考する」