希望のメッセージ 7月5日

 百の事を行って、一つだけが成ったとしたら、これははたして失敗か成功か。
 多くの場合、事の成らない九十九に力を落とし、すべてを失敗なりとして、悲観し意欲を失い、再びその事を試みなくなる。こうなれば、まさに失敗である。
 しかし、よく考えれば、百が百とも失敗したのではない。たとえ一つであっても、事が成っているのである。つまり成功しているのである。一つでも成功したかぎりは、他の九十九にも成功の可能性があるということではないか。
 そう考えれば勇気がわく。希望が生まれる。そして、事の成った一つをなおざりにしないで、それを貴重な手がかりとして、自身をもって再び九十九にいどむことができる。
 こうなれば、もはやすべてに成功したも同然。必ずやその思いは達成されるであろう。
 どちらに目を向けるか。一つに希望をもつか、九十九に失望するか。失敗か成功かのわかれめが、こんなところにもある。繁栄への一つの道しるべでもあろう。
 
 ――松下幸之助『道をひらく』
 
 

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ