「希望学」をまなぶ
3か月ほど前から,「希望」について論じている書籍を紐解き,気になったことばをメモしては,HPで紹介しています。それらのことばに触れると,弁護士という仕事と「希望」の関係について,改めて考えさせられます。弁護士は,人生の困難に直面している相談者・依頼者の方々に,数多く出会います。法律問題の解決を図ることが仕事ですが,そのことを通じて,少しでも「希望」を与えたいと思ってきました。もっとも,振り返ってみると,むしろ,苦難の中から「希望」を見つけ出すことを依頼者に教えられることの方が多かったように思います。
そんな中,少しずつ読み進めているのが,「希望学」プロジェクトから生まれた書籍です。 「希望学」は,東京大学社会科学研究所(社研)が2005年から取り組んでいるプロジェクトで,個人の希望と社会の相互関係を社会科学として探求しようとする取り組みです(同プロジェクトのホームページ参照 http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/index.html)。これまでに5冊の本を読ませて頂きました。実証的な研究を中心に据えているからでしょうか,どの本も瑞々しく,多くの示唆を含んでいます。
プロジェクトの成果のエッセンスを吸収するには,『希望のつくり方』が一番だと思います。考えるヒントがたくさん詰まっています。『希望学』(中公新書ラクレ)は,プロジェクト初期のものですが,アンケート結果をもとに自分の頭で考えることのできる,興味深いものでした。『絶望なんかしていられない』は,一人の医師の半生を取り上げた「スピンオフ・ストーリー」であり,強烈なシンパシーを覚えました。高校生や大学生にぜひ薦めたい一冊です。釜石の地域研究をまとめた『希望の再生』は,ちょうど被災者の法律相談で岩手を訪れる前に読んだこともあり,忘れられないものとなりました。
弁護士として,様々な人と出会い,多くの事件に取り組む中で,どうすれば「希望」を見出すことができるのか。そのための思索の引き出しを増やすことができたように思います。
「希望学」の今後の発展を楽しみにしています。 (嘉多山 宗)